生産者紹介
木曽木材工業協同組合
- 表の見方
- 所在地
- 名前
- 店舗名
- 職業
- おすすめ商品
- 生年月日
- 星座
- 座右の銘
- 長野県
- 田上定行さん
- 木曽木材工業協同組合
- 手作り桶職人
- さわらの江戸おひつ
- 1962/06/21
- ふたご座
- なし
私のこだわり
さわらのおひつや飯台を作るときにこだわっているポイントは何ですか?一本の木からとった材料で手作りすることですね。
さわらの木は不思議な木で、同じ種類の木でも色や硬さなどにばらつきがあります。一つの製品を、異なる木からとった材料で作ってしまうと、見た目もよくないですし、使っているうちに、ゆがみがでてきてしまうことがあるんです。一本の木からとれる材料ですと、色も一定ですし、木の縮みやそりなどの癖も一定ですから、きれいに仕上がるんです。
材料となる木の癖によっては、将来的な縮みゆがみなどを見越して、部分的にわざといびつに作る場合もあるんですよ。そうすると、使っているうちにしっくりはまってくるんで、末永く使っていただくことができるんです。手作りでないとそういう細かいところまで気を配ることってできませんよね。
さわら製品を使う上で、お客様に気をつけていただきたいことはありますか?
ご飯を食べ終わったら、すぐに水かお湯で洗ってください。洗剤はなるべく使用しないほうがいいです。
一晩ご飯を入れたままにしてしまうと、ご飯から菌が発生してカビの原因となってしまいます。
その日食べる分だけ入れて、食べ終わったらすぐに洗う。それがおひつや飯台を長持ちさせる秘訣です。
お客様にメッセージはありますか?
材料となる木を選ぶところから、私が一人で心を込めて手作りでやっています。愛情を持って手入れをしていただければ末永く使えるものですので、どんどん使ってほしいです
生産者の横顔
シャー、シャー。トン、トン。シャー。リズミカルにさわらをかんなで削る音が工房に響く。
削る。見る。削る。見る。裏返してから、また削って見る。
一削りごとに確かめるように丹念に。それでいてテンポよく、小気味よく。田上さんのおひつを作る動作には淀みが無い。荒々しいさわらの丸太の切り落としが、まんまるのおひつになってしまうまでおよそ2時間。
取材スタッフは、ため息をつきながら、田上さんの“仕事”にただただ見入っていた。
田上さんが作るさわら製品はすべて手作りである。
様々なかんなを駆使し、「削っては見る」を何度も繰り返しながら、慎重かつ大胆に作業を進めていく。ほとんど全ての作業が、手から伝わるさわらの感触と、頭の中の設計図だけを頼りに目見当で行われていく。機械はほとんど使わない。
「さわらの木は不思議な木でね。一本一本の個性が強いんです。木の個性を見極めた上でしっかりしたよりよいものを作るために、私はこだわって手作りで作っているんですよ。」
田上さんがさわら工芸の世界に入ったの高校を卒業してからすぐ。だが、先代であるお父さんからは、それから長い間、手を怪我するような危ない仕事や、新しい製品を作るような仕事は、なかなかやらせてもらえなかったそうだ。
「親父の横でやり方を見て盗んでね。親父がいないときに隠れて作ってましたね(笑)」
人の見ていないところでの修行が実ってお父さんに認められたのは25歳。
さわら工芸の作業を「一通りできるようになる」まで実に7年間の長い歳月を要したそうだ。
「はい、できあがり。」
おひつができあがった瞬間、取材スタッフの間からどよめき声が上がった。
側面の曲線の滑らかさ、木目の美しさ、“機械で測ったような”作りの精緻さもさることながら、何よりも、2時間前には単なる丸太だったものが、一人の人間の手によって、見事にまんまるなおひつに変わってしまったという事実に一同ただただ驚くばかりだった。
人間一つの道を究めればここまでできるのか、人間って凄い。そんな大げさな感情さえ沸いてくる。
当の田上さんは、しきりに照れていた。
シャー、シャー。トントン。シャー。
今日も田上さんは、さわらの木に向かい、あのリズミカルなかんなの音を響かせながら、ため息が出るほどに美しいおひつを作っているはずだ。