生産者紹介
わたなべ木漆(もくしつ)工房
- 表の見方
- 所在地
- 名前
- 店舗名
- 職業
- おすすめ商品
- 生年月日
- 星座
- 座右の銘
- 富山県
- 渡辺章司様/博之さん
- わたなべ木漆(もくしつ)工房
- 漆器製作
- 庄川挽物木地 天然木漆器 タンブラー(ケヤキ)
- 1950/04/03
- おひつじ座
- 自責と感謝
私のこだわり
■渡辺さんの漆器の魅力って何ですか?
長く使っても飽きのこない、天然木の質感豊かな漆器作りを、いつも心がけています。私は、もともと木地師なので、木の味わいを最大限に活かしたいんですね。
原木を選ぶ時も、ケヤキはケヤキらしい、栃は栃らしい特徴が十分に表されている木を選びます。それを、伝統的な木工ろくろを使い、丁寧に手で挽き、手作りで漆器を作ります。
また、漆にしても、漆器を一目、見た時に、「これはケヤキで出来ている」「これは栃で出来ている」と分かるように、必ず、透明感のある、素材の味を引き出せるような、天然の漆を使います。
黒や赤に見えても、よく見ると、必ず木の味わいが分かるように作っていますね。
また、原木選びから漆塗りまで一貫製作される、「作り手の顔が見える」漆器です!
漆器の製作は分業が当たり前なので、木地は木地師がやるもの、塗りは塗師がやるものと、通常は分かれているものなのですが、私の場合は、「作り手の顔が見えるものづくり」にこだわりたいと思っているので、木地作りから漆塗りまで、一貫して製作を行います。
分業にすれば、量をこなせるのかもしれないのですが、その分、画一化されてしまいますし、「作り手の顔がはっきりしない」ということにもなりかねないので、時間はかかるけれど、手作りならではの風合いや味わいを最大限に活かして一貫製作しています。
ですから、万が一、何か強い衝撃が加わって、割れてしまうことがあったとしても、アフターサービスが可能ですので、安心して使って頂きたいですね。
※修理のご連絡はこちらへお問合せください。
■メッセージはありますか?
何百年もの歳月をかけた天然木から生まれた、次世代も使える一生物の漆器です!私の漆器の素材とする木は、北陸地方の厳しい自然の中で、何百年という時間をかけて育ち、何十年もの歳月をかけて乾燥させた、欅や栃などの天然木です。
つまり、完成するまでに何百年という、途方もない時間がかかっているんですね。
「暮らしのためのデザイン」を提唱した工業デザイナー、著述家、教育者であった秋岡芳夫さんに、うちのお盆を愛用して頂いていたのですが、秋岡芳夫さんは、雑誌「芸術新潮」に、「手許に置き、150年をめどに使い込むつもり」と書いておられました。
秋岡芳夫さんがおっしゃるように、何百年という時間をかけて作られ、さらにこれから、100年〜200年と、 世代を超えて末永く楽しめる漆器です。
食卓に、天然木の食器が並んでいるのは、いいものですよ。
木の食器の暖かい雰囲気が部屋中に伝わりますし、手に取った時の、ぬくもりある感触も、プラスティックの器では味わえません。また、使っている時も、他の食器と異なり、木の食器は優しい音をたててくれます。木の食器は、食卓に心地よい空間を演出してくれますよ。
また、天然漆も、人肌によく似た性質を持った塗料です。雄大な時間に育まれた木のぬくもりにあふれた漆器を、生活の中に取り入れて頂いて、心豊かな日常生活を送って頂ければ、こんなに嬉しいことはないですね。
生産者の横顔
この道、35年以上
古くから、北陸における木材の一大集散地であった富山の庄川町は、木工ろくろによる挽物木地の全国有数の産地です。生産者の渡辺章司さんは、この道、35年以上!
創業より半世紀以上、福光の木地屋として、国から指定を受けている工芸材料、庄川挽物木地を生産してきた わたなべ木工芸の二代目であり、経済産業大臣指定・庄川挽物木地の伝統工芸士です。
現在、三代目の博之さんとともに、原木選び、木取り、乾燥、デザイン、木地作り、そして漆塗りまで、一貫して製作しています。
「作り手の顔が見えるものづくり」
秋岡芳夫さんとの出会い
生産者の渡辺さんが、原木選びから漆塗りまでを一貫製作するようになったのは、「暮らしのためのデザイン」を提唱した工業デザイナー、著述家、教育者であった秋岡芳夫さんとの出会いがきっかけだったそうです。秋岡芳夫さんは、工業デザイナーでありながら、大量生産消費社会に疑問を提示して日本全国で手工業の育成に尽力し、日本の工芸界に多大な影響を与えた方です。
秋岡芳夫さんの「作り手の顔が見えるものづくり」という言葉に心動かされた渡辺さんは、分業が当たり前の漆器の世界で、原木選びから漆塗りまでを一貫製作することを心に決めたのです。渡辺さんが30歳の時でした。
しかし、それからの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。
「木地師であった父の目を盗み、漆器の技を独習しました。父には、木地さえ出来ないのに、と毎日怒られましたね。漆のかぶれにも悩まされながら、習得までには10年以上かかりました」
苦労の末、渡辺さんは、40代後半には、その技術が認められ、さまざまな賞を受けるまでになりました。お父さんも晩年は、そんな渡辺さんを自慢にしていたそうです。
・日本伝統工芸富山展 富山支部賞
・伝統的コンクール入選
・日本民藝館展 奨励賞
・富山県伝統的工芸品コンクール 銀賞
『消費生活』から『愛用生活』へ
渡辺さんの漆器の愛用者のなかには、渡辺さんのお盆を一年に一枚ずつ手に入れて磨き、その色艶の変化を楽しんでいるお客様もいるそうです。「常に身近に置いて、使って頂く日常の道具となるわけですから、使いやすく、手に心地よい形や重さ、大きさを、いつも考え抜いて作っています。」
製作していて、一番楽しいことは?と伺うと、
「製作している間は、いつも楽しいですね。大変なこともありますが、作品作りの間は、それに没頭できる。いい仕事だと思います。そして、一番大切なことは、やはり、まじめに取り組むこと。誠実な仕事ですね。」(二代目 渡辺章司さん)
「初めて、木工ろくろの前に座った時、祖父や父が受け継いできた伝統がこういうものだと実感できて、嬉しかったのを覚えています。
これからも、庄川挽物木地の伝統を大切にしつつ、現代のライフスタイルに会う漆器を作っていきたいですね」(三代目 渡辺博之さん)
今日も、渡辺さん達は黙々と、暮らしの漆器づくりに取り組みます。